遺言案内

遺言書は、亡くなっていく人(被相続人:死亡した人)の思いを次の世代に託す言葉です。最後にいろいろな思いを伝えるための書面です。それだけに思いが伝わらない、無効になるようなことはあってはならないことです。民法「第7章 遺言 第960条~第1027条」まで取り扱い方が記載されております。日頃気になったことや見直したことなど纏めております。また、それぞれに該当条項を記載しております。条文を読んで確認されてから「遺言書」を作るようお勧めします。

お探しの項目をまとめています。

1 遺言の必須知識(抽出)

  • 1 遺言する能力:満15歳以上(民961条)
  • 2 遺言者は、遺言をしたときに遺言ができる能力があればよい。(民963条)
  • 3 遺言者は。包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を遺言することができる(民964条)。
     包括遺贈は、借金も割合に応じて引き継ぐ。特定遺贈は、借金を引き継がない。
  • 4 遺言には特別な例を除いて、自筆証書遺言(民968条)、公正証書遺言(民969条)、秘密証書遺言(民970条)の3つがある。
  • 5 未成年者、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人は、遺言の証人又は立会人となることができない。(民974条)
  • 6 遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。夫婦で同じ遺言書で遺言することはできない。(民975条)
  • 7 遺言は、遺言者が死亡の時からその効力を生ずる。(民985条)
  • 8 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができる。(民986条)
  • 9 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。(民990条)
  • 10 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。(民994条)
    ・「遺言者Aの死亡以前に受遺者Bが死亡したときは、Bの相続人Cに遺贈する。」旨の遺言者の意思表示があるときは、Cは遺贈を受けることができる。(民995条)
  • 11 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。(民1004条1項)
    ・封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。(民1004条3項)
  • 12 遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。
    ・ 過料とは、金銭を徴収する制裁の一つ。国または地方公共団体が行政上の軽い禁令を犯した者に対して科する金銭罰。(民1005条)
  • 13 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。(民1009条)
  • 14 遺言者が亡くなったときは、遺言執行者は、遅滞なく相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。(民1011条)
  • 15 遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。(民1022条)
  • 16 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。(民1026条)
  • 17 遺留分の帰属及びその割合(民法1042条)
  • 18 受遺者又は受贈者の負担額(遺留分減殺の順序の指定)(民1047条)
  • 19 遺留分の請求権は、贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間、相続開始の時から10年を経過したとき時効によって消滅する。(民1048条)
  • 20 遺留分の放棄(民1049条)
  •  ・相続開始後であれば、遺留分放棄をする意思表示で足りる。
  •  ・相続開始前に遺留分放棄をする場合には、家庭裁判所に遺留分放棄を申立て、許可を得る必要がある。

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2 遺言によりすることのできる事項

1 認知(民781条2項)※
2 後見人の指定(民839条)
  後見人とは、判断能力が不十分と考えられる者(未成年者)を補佐する者。
3 後見監督人の指定(民848条)
4 相続人廃除の請求(民893条)および廃除の取消請求(民894条2項)※
5 相続分の指定またはその指定の委託(民902条)
6 特別受益者の相続分の指定(民903条3項)※
7 遺産分割の方法の指定または指定の委託(民908条前段)
8 遺産分割の禁止(民908条後段)
  相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができる。
9 遺産分割による共同相続人相互の担保責任の指定(民914条)
10 遺言執行者の指定(1人又は数人)または指定の委託(民1006条)
11 受遺者又は受贈者の負担額(遺留分減殺の順序の指定)(民1047条)
12 信託法上の信託の設定(信託2条)

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3 自書証書遺言の記入上の注意事項(民968条)

第968条(自筆証書遺言) 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
② 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない
③ 自筆証書(目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 《要 約》
1 全文を自書する。
2 日付を自書する。(日付は特定する必要がある。ゴム印の日付は無効。平成何年何月吉日は無効)
3 氏名を自書する。(芸名や雅号でも良いとされている)(大判大4.7.3)
4 印を押す。(実印でなくてもよい。認印・三文判および拇印の押印でも認められる。)(1・2・3は相続・贈与・遺言の必須知識と登記P160)
5 目録の全部又は一部をワープロで作成することができる。ページごとに署名し、印を押す。
6 自書した遺言書・目録を訂正(加除その他の変更)する場合は、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければならない。
 注:日付、氏名、押印などは判例で認められたことがあるからといっても、正規の方法ですることをおすすめします。自筆証書遺言は、無効になる場合が多いといわれております。

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4 公正証書遺言(民969条)

1 証人2名の立会い
2 遺言者は、公証人に遺言の主旨を述べる。
3 公証人は遺言者の遺言の主旨を筆記し、これを遺言者と証人に読み聞かせ、又は筆記した物を見せる。
4 遺言者、証人は、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し印を押す。
5 遺言者が署名できない場合は、公証人がその事由を付記して署名に代えることができる。
6 公証人は、遺言証書は上記各号に掲げる方式に従って作ったものであることを付記して、これに署名し、印を押すこと。
7 公正証書遺言のいいところは、家庭裁判所の検認手続が不要であることと(民1004条2項)、1989年(昭和64年)1月1日以降に作成された公正証書遺言は、全国どこの公証役場からでも公正証書遺言の有無を一定の手数料と必要書類を添付して検索できる。

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5 秘密証書遺言(民970条)

 秘密証書遺言とは、遺言者が遺言内容を誰にも知られたくないという場合に使われています。秘密証書遺言の場合は、内容を秘密にすることはできますが、自分が遺言書を作成してから、その作成した遺言書が秘密証書遺言であるということを公証人と証人に確認してもらう必要があります。

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6 特別遺言(民976条)

 死亡の危急に迫った者の遺言

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7 遺言執行者になれる人

 遺言執行者は、未成年者や破産者はなることができませんが、それ以外であれば誰でもなることができます(民法1009条)。
 受遺者や相続人が遺言執行者になることができます。

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8 遺言執行者の権利義務

1 遺言執行者を遺言で指定していない場合は、利害関係人の請求によって、家庭裁判所が選任する。(民1010条)
2 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。(民1012条)
3 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができない。(民法1013条)
4 財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。(民1014条3項)
5 遺言執行者は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。(民1015条)

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9 遺言執行者の複数選任

 遺言執行者を複数人選任することができます(民法1016条)。
 この場合、遺言に別段の意思表示がない限り、過半数で任務の執行を決することになりますが、保存行為は各遺言執行者が単独で行うことができます(民法1017条)。
 被相続人の死亡時に、第1順位の遺言執行者が職務を行うことができない場合には、第2順位の遺言執行者が職務を行う、などという形で定める場合です。

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10 遺留分の帰属及びその割合(民法1042条)

1 遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人にある。兄弟姉妹には遺留分はありません。
2 直系尊属(父母・祖父母等)のみが相続人のとき、被相続人の財産の3分の1
3 その他の場合(子・配偶者、子と配偶者、親と配偶者等)には、被相続人の財産の2分の1

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11 受遺者又は受贈者の負担額(遺留分減殺の順序の指定)(民1047条)

1 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
2 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
3 受贈者が複数あるときは、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
4 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、1・2の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

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12 遺言書の文言

1 相続には、「相続させる」と記入する。
 「相続させる」と言う言葉は遺言者の言葉であり、「相続する」と言う言葉は、相続を受ける人の言葉となります。
 「あげる、くれる」などの言葉でも、遺言すると言う意味に取れるものであれば認められる。
2 遺贈には、「遺贈する」と記入する。「遺言する」とはっきり書くこと。

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13 遺言書に係る「相続・遺贈の登記」とメリット

1 相続人に相続させる場合の登記について
 ① 遺産分割協議書は作らない。
 ② 相続人の印鑑証明書も要らない。
 ③ 登記識別情報(権利証)もいらない。
 ④ 登記の申請人は、遺言で指名された相続人である。
 ⑤ 登記のとき添付書類は、相続証明書(公正証書の遺言書)と司法書士に依頼する場合にはその委任状である。
 ⑥ 公正証書遺言であれば、家庭裁判所の検認手続が不要である。(民1004条2項)
2 相続人以外の人に遺贈(死後贈与)するときの登記について
 ① 遺産分割協議書は作らない。
 ② 相続人の印鑑証明書も要らない。
 ③ 登記識別情報(権利証)は必要。
 ④ 登記識別情報(権利証)がない場合、相続人全員に通知書が法務局から通知される。
  遺言執行者がいるときは、遺言執行者に通知書が法務局から通知される。

 ⑤ 登記義務者の対応(登記識別情報(権利証)がない場合)
  ・ 遺言執行者がいる場合
    登記は、遺言執行者と遺贈を受ける者との共同申請
    遺言執行者の印鑑証明書

  ・ 遺言執行者がいない場合
    登記は、相続人全員と遺贈を受ける者との共同申請
    遺言者の相続人全員の印鑑証明書

注:平成17年3月7日に不動産登記法が改正され、従来の登記済証(一般に権利証と呼ばれていました)から、現在では登記識別情報に代わりました。

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14 包括遺贈者の権利義務

○ 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。(民990条)
 遺産の全部または何分の一かの割合を与えるというのが包括遺贈である。包括遺贈を受ける者は相続人によく似ているので、包括受贈者については、本条で相続人と同じ扱いをすることにしたわけである。このため包括遺贈を受けた者は、遺言をした者の借金(債務)まで一定の割合で受け継ぐことになる。
 そして、遺贈の承認や放棄の時期・方式なども(986条から989条までの規定によらないで)相続の承認・放棄の場合と同じ取扱いとする。
 包括遺贈の放棄があった場合、もらい分がどうなるかについては995条を参照されたい。口語民法P497
 第995条(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属) 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
 包括遺贈は、目的たる権利を特定するものでないから、申請書に記載すべき不動産の表示は、遺贈をした遺言書に記載される必要はなく、仮にこれが記載されていても、登記簿上の表示と符合する必要はない。実務 相続登記法P580

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15 自筆証書遺言(参考例)

遺  言  書(参考例)

第1条  遺言者甲野太郎は、本遺言の効力発生時(遺言者死亡時)において遺言者の有する不動産及び預貯金等を含む全ての財産を、遺言者の長男甲野一郎(昭和35年○月1日生)に相続させる。
第2条  遺言者は、前記甲野一郎が遺言者より先に若しくは遺言者と同時に死亡した場合においては、本遺言の効力発生時(遺言者死亡時)において遺言者の有する不動産及び預貯金等を含む全ての財産を、伊藤三郎(住所:秋田県由利本荘市○○字○○5番地(昭和43年3月○○日生)に包括して遺贈する。
第3条  遺言者は、この遺言の遺言執行者として次の者を指定する。
      住 所 秋田県由利本荘市前郷字古堀136番地2
      職 業 行政書士
      遺言執行者 三 浦 信 男
          昭和○○年2月1日生
2 遺言者は、上記三浦信男が遺言者より先に若しくは遺言者と同時に死亡した場合または病気等により遺言執行者の職務を行うことができない場合においては、この遺言の遺言執行者として、前記甲野一郎を指定する。また、この場合において、前記甲野一郎が遺言者より先に若しくは遺言者と同時に死亡しているときは、遺言者は、この遺言の遺言執行者として、前記伊藤三郎を指定する。
3 遺言者は、遺言執行者に対し、不動産の登記に関する手続、預貯金等金融資産の名義変更、払い戻し及び解約、その他この遺言を執行するために必要な一切の権限を与える。

     令和元年11月1日
       住 所 秋田県由利本荘市前郷字古堀143番地1
       職 業 無職
       遺言者 甲 野 太 郎  印
           昭和○○年1月1日生

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